次世代リーダー育成の壁とその乗り越え方
2025/07/24 更新
企業が持続的な成長を実現するためには、激変するビジネス環境を切り拓く次世代リーダーの存在が不可欠です。しかし育成プログラムを設計し、実行しても、現実に直面する様々な「壁」によってその効果が十分に発揮されないことがあります。
今回は、次世代リーダーを育てる中で陥りがちな問題と、それをどう乗り越えるかについて、具体的に考えていきましょう。
今回は、次世代リーダーを育てる中で陥りがちな問題と、それをどう乗り越えるかについて、具体的に考えていきましょう。
1.経営層・上層部の「本気度」が見えにくいため推進力がない
次世代リーダー育成が最もつまずきやすい原因の一つは、経営層や上層部の「本気度」が見えにくいことです。育成を人事部門任せにし、経営戦略との連携が薄いと、育成は「やらされ仕事」になりがちです。また、「次世代リーダー」という言葉だけが先行し、具体的に「どんな資質を」「何のために」育てるのかが不明確だと、プログラム全体に軸が通りません。上層部が育成の重要性を理解せず、時間やリソースの確保に非協力的だと、現場のモチベーションも低下します。
この設計図は、単なる能力要件のリストではありません。あなたの会社の未来を指し示す「生きたリーダーシップの定義」であり、育成プログラム全体の土台となるものです。
「未来への投資」として位置づける
リーダー育成が、短期的な出費ではなく、会社の未来を作るための大切な「投資」であることを、具体的な売上目標や将来のリスクと結びつけて、トップ層にしっかり説明しましょう。「この育成がなければ、〇年後に〇〇という目標達成が難しくなる」といった具体的な話が有効です。トップからの直接のメッセージ
大切さを語り、参加者に「期待している」と伝える機会を作りましょう。これにより、育成の優先順位が会社全体で上がり、参加者のやる気も大きく高まります。育成の目標を具体的にする
「理想のリーダー像」を、抽象的な言葉ではなく、実際に「こんな行動ができる人」「こんな時にこんな判断ができる人」といった具体的な行動や判断の基準として明確にしましょう。これを経営層、管理職、人事部で共有することで、全員が同じ方向を向いて育成に取り組めます。2.リーダー候補者本人の意欲が低く受け身になってしまう
選ばれた次世代リーダー候補者自身が、育成プログラムに対して積極的に取り組まず、受け身になってしまうこともよくある問題です。「忙しいのに」「なぜ自分が選ばれたのかわからない」といった意識があると、せっかくの育成も効果が出にくくなります。
選ぶ段階で意欲を引き出す
候補者を選ぶ際に、なぜ彼らが選ばれたのか、会社が彼らに何を期待しているのかを丁寧に説明し、本人のキャリアプランと育成プログラムの目標をじっくり話し合いましょう。この対話を通じて、「これは自分の成長と会社への貢献のチャンスだ」と本人に強く感じてもらうことが大切です。当事者意識を育む
育成プログラムの中に、自社の実際の課題を解決するプロジェクトを組み込むなど、候補者が自ら考え、行動する機会を増やしましょう。成功体験だけでなく、困難を乗り越える経験を通じて、リーダーとしての「当事者意識」を育みます。振り返りと目標設定を習慣にする
研修の前後や普段の仕事の中で、定期的に自分の行動を振り返り、具体的な成長目標を立てさせましょう。上司や先輩との話し合いを通じて、目標達成への強い気持ちを高め、自分で学ぶサイクルを作ります。小さな成功を認め、褒める
プログラム期間中、候補者が行動したり、小さな成果を出したりしたことを、会社全体で積極的に認め、褒める機会を作りましょう。これにより、学ぶことへの意欲と自信が湧き、「もっと挑戦したい」という気持ちを高めます。3.育成効果の見えにくさが原因で立ち消えに
次世代リーダー育成は、すぐに成果が出るものではなく、その効果をはっきりと示すことが難しいという課題に多くの会社が直面します。これが、次の育成への予算を確保しにくくしたり、取り組み自体が立ち消えになったりする原因になります。個人の考え方や行動の変化は数字で表しにくく、成果が出るまでに時間がかかることも多いため、短期的な視点で「効果が見えない」と判断されがちです。
次世代リーダーを育てる道は、多くの壁がありますが、これらの課題を前もって理解し、一つ一つ対策を立てていくことで、会社は激しい変化の時代を力強く乗り越え、未来を築くリーダーたちを育てることができます。
評価の基準を具体的かつ多角的に設定する
育成を始める前に、意識の変化、行動の変化、身につけたスキルのレベル、そして実際の仕事での成果(例:担当プロジェクトの目標達成、チームの生産性向上)といった、様々な視点から評価する具体的な基準を決めましょう。特に、仕事の成果にどう繋がったかを意識した基準設定が重要です。継続的な確認とストーリーとしての共有
プログラムが終わった直後だけでなく、半年後や1年後など、定期的に効果をチェックしましょう。また、単に数字を並べるだけでなく、「〇〇さんがこの育成で身につけた〇〇の力を使い、チームの課題をこんな風に解決した」といった具体的な成功例をストーリーとして共有することで、育成の効果をより分かりやすく、印象的に伝えることができます。学び続ける文化への進化
育成の成果をはっきりさせることは、単にプログラムの良し悪しを判断するだけでなく、会社全体に「学び、成長することが価値を生む」という文化を根付かせる機会にもなります。成果を共有し、成功した人を称賛することで、会社全体の学ぶ意欲と、自ら変わっていく力を高めることができます。監修

アイルキャリアカレッジ 講師

【講師歴】 勝つべくして勝つ営業の戦い方、新入社員に対する組織人としてのマインド養成、さらには戦略視点の事業計画立案まで。開発した研修プログラムは60以上。講師としてファシリテーションを務めた回数は1000回を超える実績を持つ。その根本は常に「現場で活用出来なければ意味がない」という発想。