新入社員がコンプライアンスを率先垂範するようになる教え方
2023/08/09 更新
「法令遵守」と説明されることが多いコンプライアンス。
新入社員教育においても法律や規則、
ルールを守ることの重要性を訴えるパターンを、よくお見受けします。
しかし、そのようにコンプライアンスを「法令遵守」とだけ教えていると、
「法令に違反していなければいいんでしょ」という捉え方をされかねません。
最悪なのは「バレなければ大丈夫」などと考え出す社員が現れることです。
企業に対する社会的責任(CSR)の重要性が高まる昨今、
そんな事態は何としても避けたいところです。
では、どのような新人教育を行えばよいのでしょうか。
まずコンプライアンスを3つのレベルに分ける
企業活動においては、法令に違反していなくても、
顧客から問題視される行為が存在します。
むしろルールとして明文化されているわけではないにも関わらず、
社会的制裁を受けるケースは増える一方です。
従って新入社員へのコンプライアンス教育においては、
法の定めがない行為であっても、企業内、業界内での決まり事に反するなら、
行うべきではないことを、理解してもらう必要があります。
そこでまず、コンプライアンスには次の3つのレベルがあることを教えましょう。
- レベル1:法令に違反する行為は慎む
- レベル2:法令に明確な定めはないが組織内のルールに違反する行為は慎む
- レベル3:法令、組織内のルールともに明確な定めはないが、
社会から認められないような行為は慎む
最も難しいのはレベル3です。明文化されたルールを守るわけではないため、
本人の倫理観が問われるからです。そして企業の「倫理観」とは、
そんな社員一人ひとりの「倫理観」が結集したものと言えます。
社員がしっかりした倫理観を持てば、
企業もしっかりした倫理観が備わった組織体になれるのです。
後ろめたさVS 晴れやかさ
会社勤めが長くなればなるほど、コンプライアンス違反の誘惑も増えてくるものです。
幹部社員が「組織を守るために」と粉飾決算や偽装工作といった不正行為に手を染めるのは、
その典型と言えるでしょう。
そんな事態を防ぐためにも、まだ社会に出て間もない新入社員のうちから、
「法令、組織内のルールともに明確な定めはないが、
社会から認められないような行為は慎む」コンプライアンスのレベル3について、
しっかりと落とし込むべきです。
具体的な方法としては、コンプライアンス違反かどうか判断に悩む行為を並べ、○か×か答えてもらった上で、次は×の行為が、3つのレベルのうちどれに違反しているのかも考えていく、といったワークショップは効果があります。
何が問題なのか整理することで、明文化されたルールのないレベル3も、
コンプライアンスであると意識するようになるからです。
このようにして「法令に違反していなければいいんでしょ」という、
コンプライアンス違反の発端になる考えは、元から絶っておくことをお勧めします。
また現場においては、想定外のクレームやトラブルが発生し、
対応で個々人の判断が問われることも珍しくありません。
そこでものをいうのが、迷うことなく的確な判断を下すための「価値基準」です。
ある企業では「その行動は、家族が見ても後ろめたさはありませんか」という
文言を刻んだカードを社員に配り、迷ったら思い出すようにしています。
「家族」のためにという表現から、後ろめたさを感じるような判断は慎み、
晴れやかな気持ちで働いて欲しいという、会社の「価値基準」が伝わってきます。
社員のモチベーションを考えたコンプライアンス
「法令遵守」 や 「ルール強化」といった決まり事の徹底という面が、
クローズアップされがちなコンプライアンスですが、ただひたすら締め付けるだけでは、
コストと業務負荷ばかりかさみ、きりがありません。
場合によってはモチベーションが下がり逆効果になります。
大切なのは社員一人ひとりが自分の仕事、会社、仲間に誇りを持てる、
あるいはお客様を大事にしたいといった、晴れやかな気持ちで働ける環境を、
できる限り整えてあげることです。
そうすることで、正しく誠実に行動しモラルに反することはしない、
健やかな社員に育ってくれることでしょう。